Panda がウチにやって来た


7月末に主治医から電話がかかってきました。主治医といっても私の主治医ではなく、愛車Pandaの主治医なんですけどね。
ちょっと電話から離れたところにいたので気が付かず、不在着信が残っていました。
不在着信にはヤナガワモータースという赤い文字、私にとっては安心感で笑顔になる着信履歴です。
折り返しかけようとは思っていたのですが、何となくバタバタしていてかけそびれたまま夜になりました。
御用の向きは大体分かっていたし、向こうも着信を残していることで満足しているはず、お互いに急ぎの用事ではないのでストレスもない。
一日あけて手が空いた時に着信履歴にリダイヤル。
「ご無沙汰していまぁす」
「お暑うございますぅ」
何となくふたりで笑い合い、お互いの身体を気遣うセリフを交わし、まるでジジイとババアの社交辞令です(笑)。

私のPandaの車検が7月いっぱいで切れるので、車に不都合がないのか心配して連絡をして下さったのです。
ヤナガワモータースの柳川さん、物静かでありながらとても信頼のおける、付かず離れずの距離感が心地良い、私とPandaにとって大事な人です。

 

image

2年前のゴールデンウィーク明けに納車されてきたPanda、新潟から陸送をかけてやってきました。当日は朝からワクワクして落ち着かず、家族は私の事を面白がって見ていたと思います(笑)。
あらかじめ届いていた書類で仮ナンバーを借りてきていたので早速試乗。
初めてのイタリア車の乗り味は如何なものか。
想像通り味のあるエンジン音と軽快な躍動感でしたよ。
チャキチャキしていて、やんちゃな少年のようです。

ところがところが、ガソリンが殆ど入っていなかったのでスタンドへ 行って、ガソリンを入れようとフューエルキャップを開けようとしたのですが、受け取ったキーの中にそれらしいキーがないのです。
四苦八苦した挙句結局ガソリンは入れられず帰宅。
そこで最初のヤナガワモータースの登場です。
舞い上がっていた私は、電話が繋がるや否や自己紹介もせず挨拶もろくにしていないのに「今日納車されてきたPandaのフューエルキャップのキーがないのです。ガソリンが入れられないんです。」などと必死で訴えました(笑)。
柳川さんは驚いた様子も戸惑う様子もなく、静かに「とりあえず壊すしかありませんね。」と大丈夫ですと諭すように話してくれました。
フューエルキャップを壊してガソリンを半分程度入れて、壊したフューエルキャップを戻してガムテープで留めて車を持って来てくれればいいですよ…って言ってくれて一安心。
一安心したは良いけれど、鍵を壊すって泥棒じゃないんだから、 どうしたら良いのか分からず、知り合いの鍵屋さんに相談したらすぐに来てくれて、フューエルキャップも壊さずキーまで作ってくれました。

欲しかったPandaが手に入ってご機嫌の私、翌日に娘を乗せてガソリンスタンドへ行き、その足でふたりでラーメンを食べに行きました。
イタリア車なんだから、そこはせめてパスタでしょう(笑)ははは。
初めての左ハンドルにウキウキ運転、娘は「ママ、寄ってる寄ってる」なんて叫びながら笑っていました。

さてさてさて、喜んでばかりはいられません。
なんせ経験のないイタリア車、何が正常な状態かサッパリ分からないのですから。
私にとって心地の良いこの音が正しい音なのか、このブレーキに引き摺りはないのか、異常な臭いくらいは分かるけど、いったいどうなの???
という訳で、早速ヤナガワモータースに行かなくちゃね。

ヤナガワモータースは神奈川県の足柄にあります。
不安だったのはちゃんと足柄まで着けるのかという事。
車の調子が分からないのにまずまずのロングドライブです。
でも行くしかないでしょう(笑)。
「なるようにしかならないよ」というのが私のモットーなので、不安こそありましたが迷いは微塵もなく、それどころかワクワクして出掛けました。
エンジンはちゃんとかかるので、走って動いてさえいればなんとかなる。だから到着するまでトイレ休憩もなし、エンジンを止めることなく足柄まで一気に走ってしまおう。
怖いのは渋滞、渋滞にはまってそのまま車が止まってしまったら最悪。
だから渋滞のない時間を選んで早朝に出発しました。
首都高に乗り中央道に入り大井松田、のどかな風景に心が緩みました。

Googlemapに誘導されて着いた場所はただの大きな民家、看板もなく一見自動車整備をやっているような気配は見られませんでした。
車を降りて門から覗くと、、、そこにはパラダイスが広がっていました。Pandaが何台も並んでいたのです。Panda好きにとってPandaがたくさんいるって、見ているだけで幸せなんですよっ(ニヤッ)。
どうも裏から入るようだったのでそちらに回りました。
整備用のガレージと大きな母屋、声をかけてみましたがどなたもいらっしゃらないようでシーンとしていました。
仕方なく電話をかけたのですがNoanswer、そんなこんなしていたら母屋からお母様らしき女性が顔をのぞかせて、連絡を取ってくれるとのご配慮、深々と頭を下げました。
しばらくすると「自治会のドブさらいしてるから少し待ってて欲しいって」との事。
ドブさらいね、うん、よくあるよね、ん?よくある? 私はした事ないけど、きっとあるんだ。
広い空と緑の山並みを眺めながら待っていると、程なく柳川さんが現れました。

「お待たせしてすみません。」と言ってちょっとはにかんだような笑顔のツナギ姿の柳川さん。
挨拶も早々に車に向かう。私よりPandaに興味があるらしい(笑)。
フューエルキャップの問題は解決した事、運転席側の窓が開かない事、クーラーが効かない事、この車が新潟から来た事、その他諸々気が付いた事を伝えました。
整備手帳を見ながら車の中、外装、下回りをチェックして、ボンネットを開けてエンジンルームを見て、まずまず大丈夫だと思いますよとの事。もちろん手を入れなければいけないところはあるけど、長い間放置されていたPandaで、ここまで無事に走ってこれたのだから優秀です…と。
開かない運転席側の窓は壊れているのではなくて、固着しているだけなので今直しますねと言いながら、ブレーキディスクのサビ落とし、サイドブレーキの調整、鳴らなかったクラクションの交換、など今出来る調整や交換を細々とやってくれました。

一通り終わった後、車に負担のかからないエンジンのかけ方、クセのあるPandaの運転の仕方、エンジンオイルの種類、自分で出来るメンテナンスなどをお話ししてくれて、抱えていた不安が半分になったのを覚えています。
結局車検を通すにはそれなりに修理が必要だったのですが、その時は他のPandaオーナーさんの車でいっぱいで今は預かれないので、修理の順番待ちという事になりました。
その後、まったりと世間話をしながら、私が古いタイプのグリルに取り替えたいんですと言うと、ひとつ持ってるから良かったらどうぞって譲ってくださり、取り付け方を丁寧に教えてくれました。
「大金持ちじゃないので、少しずつ無理のない程度に手を入れて、長く乗っていこうと思っているんです。」
「それがいいと思いますよ。」
そんな会話をしてヤナガワモータースを後にしました。

次回へ続く

コメントを残す